こんにちは、
京セラ名誉会長の稲盛氏は、経営者には、この知識、見識、胆識が大切だとおっしゃっています。
私は、この3つの違いが、いまひとつよくわかっていないように思います。
ですので今回は、この違いを考えていこうと思います。
今回は、稲盛氏の後に、京セラの社長になられた、伊藤謙介氏のお言葉もあります。京セラの創業期、稲盛氏がどうやって部下の方を指導したのか、これも書かれています。この中に、どうすれば知識から胆識に高めていけるのか、その方法論のヒントがあるように思います。
こちらも併せて、ご紹介したいと思います。
私は、この3つは次のような違いを持っていると思います。
1 知識 = チャレンジ拒否
2 見識= 「素直にやってみればできる」
3 胆識 = 疑いのない真理
1つずつ説明します。
1 知識 = チャレンジ拒否
稲盛氏:
戦前戦後を通じて日本の有識者を指導した、安岡正篤(やすおかまさひろ)という方がいます。その方が「知識、見識、胆識」という話をされました。安岡先生は、「知識は本を読んで学ぶことができます。しかしそれでは単なる物知りです。」とおっしゃいます。
伊藤氏はこのようにお話をされています。
→ ここまでの段階が、いわゆる知識ではないかと思います。
心理学や、意識の分野から企業経営の中の知識を考えてみたいと思います。
この段階は、顕在意識で仕事を認識している段階です。
そして、これまでやったことがあるのかどうか、これを中心に仕事の選別をしています。
今までやったことがない分野ですと、自然と、「その仕事は自分の知らない世界」というカテゴリー分けをします。
潜在意識は、現状維持を望みます。なぜならば、新しい事は、必ずリスクを伴うからです。「リスクを伴う=命を危険にさらす」生存の危機に触れるからです。
無意識は、新しいものに対して、それを無意識のうちに選別し、人間の意識を「チャレンジをしない方向」に促します。
潜在意識はこのように考えます。「これは、自分が今まで知っていることではない、チャレンジを伴う、自分とは全く違う世界のことだ。。。」このような情報の分類を行っています。
これは言い換えれば、情報が頭に入っているだけの段階です。
これが、知識を頭の中に入れるということだと思います。
2 見識= 「素直にやってみればできる」
稲盛氏: 「安岡氏は、「『大切なのは知識を見識にまで高めることです」』と言っています。物事はそのように見識で判断しなければならないのです。
見識とは、『あの人には見識がある』というように、知識が自分の理念、信念にまで高まったもののことです。『自分はかくあるべし』、『私の人生観は…』という、確固とした世界観にまで高まったものです。そこまで行くには、自己鍛錬をする必要があります。単にテープを聞いたり、本を読むのではなく、それを繰り返し熟考します。すると、『稲盛塾長が言われるような生き方をしなければならない』という信念を抱くようになる。これが見識です。」
伊藤氏はこのようにおっしゃっています。
「『…これはこういう工程で、こういう方法で作ったらいい。でも、こうなった場合は、ここに注意して進める』と、そこまで詳細に指示をされました。そして、みんなの目を見て、『わかったか』と確認されます。そう言われたときに下を向いていようものなら、まだわかっていないとばかりに、わかるまで説明をしてくださいました。。。。注文の中には、当時の京セラの技術レベルでは、とても難しい製品もありましたが、名誉会長はお客様に頼まれた事は、基本的に全て引き受けられていました。名誉会長は難しい製品はよくわかっていらっしゃいますから、『これは難しいかもしれないけれど』と先手を打ち、仕事の説明をされました。その話を聞きながら『ほんとかな』と思っていると、『お前はまだ不審な顔をしているが、これはこうやったら絶対にできる』と我々ができる気持ちになるまで説得されました。要するに、部下が不審な顔をしていたら、できる製品もできないものです。心から『できる』と思い、100%納得した顔をしたときに本当にやる気になっているわけです。ですから、『もっと顔を上げてきかんか!』と、我々にエネルギーを注入しながら、そのプロセスがカラーで見えるまで説明し、やる気にさせていただきました。そこまでやって、初めて『わかったな。これでやろう』となるわけです。みんなの意識が変わり、非常に強烈な思いを持たなかったら、物事は成就しないわけです。したがって、我々がやる気になるまで、とことん話し込まれました。」
→ これは、潜在意識に透徹するまでにその願望を強くしている、ということだと思います。作業をするスタッフたちのイメージの中で、潜在意識に落とし込んでいる作業だと思います。世の中のすべての出来事は、潜在意識のイメージが実現しています。上司からの命令を聞くけれども、「そんなこと実際はできっこないじゃないか」、と思っていたら成功の可能性がゼロになるのです。
これは1つのゼロサムゲームです。ですから、稲盛氏は、この最初の指示を出すところで、エネルギーと全身全霊をかけてスタッフの潜在意識を書き変えていらっしゃったのだと思います。
おそらく、京セラを経営していく中で、最初は全てご自身でなさっていたと思います。
そして、自分はできるのに、部下ができない、この違いは何なのか?とお考えになります。そしてその違いを分析されていったのだと思います。京セラの創業者のように、リーダーは、率先垂範して自ら仕事をとって来なければいけません。けれども、とってきた仕事を、自分が実行するのと同じように部下が実行してくれなければ、全てアウトになってしまうのです。
ですからここで、このような、「必ず実現できる」指示の出し方をされたのです。
言い換えると、部下の前に、ご自身の分身をイメージで作り出します。その分身・アバターが、事細かに作業をするわけです。その時に、上司の意識を、そのまま説明を聞いているスタッフに移し込んでいったと思います。
私自身、弊社の仕事の中でそれができるかどうか判りません。
けれども、必ずできるはずだと思い、部下の能力を心から未来進行形で考え、愛を持って接するなら、それが可能になるように思います。
3 胆識 = 疑いのない真理
さらに稲盛氏はこのように続けます。
「ところが、それでも学んだことを実行するには至りません。安岡先生は、『さらに胆識まで高まっていなければならない』とおっしゃっています。
胆識とは、知識と胆力とが合わさったものです。知識を胆識にまで高め、実行が伴うようにすることが大変大事なのです。」
大辞泉で胆力を見てみます。
「ことに当たって、恐れたり、しり込みしたりしない精神力。ものに投じる威力。肝っ玉。例としてー胆力を練るー」とあります。
また、伊藤氏はこのようにおっしゃっています。「同時に名誉会長は、仕事の夢や希望についても語られました。『これを成功させたら、もっとスケールの大きな注文につながる』とか、『これを収めたら、これは最新の電子機器に組み込まれ、それを使えば、みんなの生活がこんなに変わる』とか、そういう風に夢や、やりがいをみんなに与えられました。
・・・・今の大企業では、このようなリーダーシップが欠けており、上司の仕事の指示も形ばかりになっている場合があります。『メールを送ったよ。見ているでしょう』と簡単に指示しておしまいです。『これやれ、あれやれ』だけを部下に指示して、失敗したら『お前は何をやっとる』と文句ばかり言っています。そういう傾向が官僚化して、仕事がうまくいかない会社や組織にはよく見受けられます。特に新しい創造的な仕事を成功させるには、壁を乗り越えていく必要があります。壁をぶち破っていくものは、人間の意志の力です。『こうしたらできる』と思い込んで、それをとことん追いかけていくことで道を開きます。夢や希望、そして信念が人間に困難を乗り越える勇気を与え、人間の持つ潜在能力を引き出してくれるのだということを教えていただきました。リーダーは、部下にその仕事の夢や意義を解き、自分の思いやエネルギーを伝えていかなければならないのです。」
→やはり、伊藤氏は、潜在意識の持つ力や、意思や心の力がいかに大切か、これをよく理解しておられました。なぜならば、稲盛氏がそれを繰り返し伊藤氏に伝えられたからです。
実際に京セラの創業期に稲盛氏が、手取り足取り、潜在意識を変える方法を直近の部下たちに教えていかれたのです。
それを実践していくと、どういうわけか新製品プロジェクトが成功する。
そして自分の能力が、「これほど開発された」という喜びを得ることができる。
そしてそれが、自分の周りの人をこんなに喜ばせている、と知ることができる。
自分の存在意義を感じることができる。
「人生が素晴らしい」と感じることができる。
「仕事に救われた」と感じることができる。
一方、自分の同級生と自分を比較してみる。
彼らは人生を謳歌していない。
仕事の文句や愚痴ばかりを言っている。
そこで「その違いはなんだろうか?」と部下が考えるようになるわけです。
それは自分が属している組織のリーダーの違いだと気づきます。
自分の仕事のやり方の違いだと思うわけです。
自分たちはどうやって仕事をやっているのか?
そこで初めて、意思やエネルギー、潜在意識の働きについて、考えるようになるわけです。
それは、自分の能力が優れていたからではない。
このような潜在能力が誰にでもあるのだ。
それを引き出すことができたから、これが実現できたのだ。
それが感謝になり、謙虚な姿勢につながります。
ここまでくると、潜在意識、人間の無限の能力を信じるようになります。
これは、もはや間違いないとなるわけです。
経験を通してして得た見識が胆識に落とし込まれる、その瞬間だと思います。
もはや何の疑いもなく、潜在意識に落とし込むこと、
無限の能力を信じること、
意思や思いが全てを作っている、
と当たり前の事のように考える、
京セラの幹部社員は、これができるようになったのだと思います。
さて、まとめますと、知識、見識、胆識の違いは下記です。
1 知識 = チャレンジ拒否
2 見識= 「素直にやってみればできる」
3 胆識 = 疑いのない真理
この中でも1番大切なのは、知識を見識まで高める段階、だと思います。
それは、潜在意識を書き換える段階です。
これは、この先の時代の流れ、トレンドともいえます。
自分の潜在意識をいつもメンテナンスして、胆識まで高めていきたいと思います。
今日もありがとうございました。
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