こんにちは、
ある経営者(Kさん)の経営体験発表がありました。
自分がたまたま勤めることになった会社が、会社更生法が適用されるに至った。
お手伝いをしていく中で、自分がこの会社の代表になった。
借金の返済が完了して、再スタートを切ることができる。
このような内容を発表されました。
これに対して、稲盛氏が「自分自身の中にフィロソフィーを作り、さらに素晴らしい会社にしてください」とおっしゃっています。
ここから10年経って、Kさんは会社の代表ではありません、役員でもありません。
今こちらの会社にいらっしゃるのか、それも不明です。
もしかしたら、こちらの会社を辞めていらっしゃるかもしれません。
その因果が、この方の発表された内容に見て取れます。
今回はそちらを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
私は下記がKさんの因果だと思います。
1 自分が被害者だと思っている。
2 素直さがない。
3 自分のエゴをスルーする。
4 「値決めは経営」を無視する
今日は3-4をお伝えします。
3 自分のエゴをスルーする。
Kさんは平社員でした。そして自分が中心になってある製品のキャンペーンを実施していました。その時に会社更生法の申請となり「支払いストップ」を言われます。
「かつてないキャンペーンを実施中で、デザイナーを始め様々な社外スタッフが、私の企画を戦友のごとくサポートしてくれていました。。。。。キャンペーンを中断してしまう事は、新製品を含めた取引先からの指示と信頼をあっさり、確実に損なってしまうことであって、これまで通りの経営なんて、絶対にありえない。。。日を追ううちに幹部社員は誰も出社しなくなり。。。取引先に少しでも安心材料を届けようと、会社の状況レポートを作成しているときに、初めて怒りの涙があふれ「どいつもこいつも、他力本願」・・・
とあります、これは、一見会社のための言葉のように見えます。けれども、私には、自分がてがけたプロジェクトを消すなんてとんでもない、私の業績はどんなことがあっても残す。という意地が見て取れます。もともとKさんは会社の方針を決定する立場でも、その責を与えられてもいないのです。
さらに
創業者に対して「私はあなたが作られた〇〇社をもう一度何とか立て直しますから、今少しお静かに願います。しかるべきその時が来たら、私を褒めてやってください」という気持ちを懐に秘めて。。。とあります。
さらに、
Kさんは、この会社の代表になります。
「社長になりたいという自分の野心が、そう言わせたのじゃないのか?」という後付けの感情が私を悩ませ始めました。。。。この時、稲盛氏の本を読み、「動機善なりや私心なかりしか」という言葉に「明確にそうだと言い切れる」このようにおっしゃっていました。
→ これに対して稲盛氏はこのようにおっしゃいます。
勝ち気で、高い能力を持っていらっしゃるあなたです。そして幸運の中でやってきただけに、いつ何時、再び大変な目に会うかもわかりません。まずはフィロソフィーを確立し、それを自分で身に付けることです。そして今後は、そのフィロソフィーに従って自分を律していくようにしてください。書店で「動機善なりや、私心なかりしか」という本を見て、イエスイエスと答えていたとおっしゃいましたが、普通のときには、誰しもそうなのです。「動機善なりや、私心なかりしか」と問えば皆、イエスと答えます。しかしある極限の時にそれが言えるかどうかです。それが問題であって、よほど自分自身を作っていなければ、イエスとは言えないのです。あなたは大変な苦労をして今日まで来られましたが、今、素晴らしい会社の社長を務めるという幸運に恵まれています。これを単なるラッキーとして終わらせるのではなく、社長たるべき人だと言われるような素晴らしい経営者に、ぜひともなってください。」
→ やはり稲盛氏は、Kさんの心を見抜かれていたのだなと思います。
「私にとっての会社は、あくまで、天からの預かり物なのです。高価格の商品群、利益率の高さ、販売ルート、その基本はすべて創業者が作りおいてくださったものであって、私はたまさかほころびた会社を繕おうとしたに過ぎないと考えています。」
→ ここを読んで、皆さんはどのようにお感じになるでしょうか? 私が経営者であれば、なぜその高価格が維持できるのか? 本当に高い利益率が実現するのか?それはなぜなのか?それは市場原理に照らして正当なものなのか?その仕組みに危機が起こるとするとどのようなことなのか?これを全て考えていきます。そしておかしいと思うところがあれば、それを正すようにします。
先程の、「私の企画」という言葉にも表れているように、何かの偶然で、できたこの高価格・高利益率の商売に対する、「欲」のようなものがKさんにはあったのではないかと思うのです。
4 値決めは経営、を無視する
「価格は文化であると堂々と捉えて今後に繋げ、長い命と誇りとエビデンスを持つ製品として、守り育てていくことが私の使命であると考える…」あります。インターネットでこの会社さんの商品や社員の口コミ記事を調べていますと、製品の効能に対する学術的な証明が弱い、あるいはないことがネックになっていると言う意見もありました。もちろんどれが正しくてどれが正しくないと言うことをここで判断するものではないです。また、同族企業が役員になっており、その一族の繁栄のためにある会社、このような意味のコメントもありました。
ここから考えると、この会社の製品や値決めについて、今一度考える必要があったのではないかと思います。
そもそも論として「本当にお客様に胸を張って販売できる、立派な商品を、お客様がご満足いただく1番高い価格で出しているか?」これを考えることも必要だったのではないかと思います。
「価格は文化である」とKさんはおっしゃいます。これを読まれた方は、この意味をどのように理解されたのでしょうか? 私にはとても違和感のある言葉のように見えます。
一昨年フェラーリ社に見学に行きました。1年間の生産台数は約900台ほどです。ほとんどがオーダーです。その価格を維持するために、ブランディングに大きな費用を使うのだと思います。そして、一人ひとりの顧客を満足させるための費用、この製品管理やカスタマーケアにもかなりの費用がかかるように思われます。
今や、ラグジュアリー商品自体の市場が危ぶまれている時ですので、この先、価格帯が維持できるのか?需要が極端に減ったとしても、利益率を確保できるのか?このような事は経営者としては考えるかもしれません。
私が心配しすぎなのかもしれません。
けれども、このようなことを考えてみると、「価格は文化」として今の高価格帯を楽観的にとらえることが難しいように思います。
そして、私は、高価格を裏付けるような、研究や立証データを準備すると思います。具体的な状況があまり見えない中で、このような問いかけをするのも心苦しいですが、皆さんはどのように思われますでしょうか?
さて、幸運に恵まれてもビジネスがうまくいかなくなるには、次のような理由があると思います。
1 自分が被害者だと思っている。
2 素直さがない。
3 自分のエゴをスルーする。
4 「値決めは経営」を無視する
稲盛氏が繰り返し「心・考え方」が大切だとおっしゃる理由はここにあります。
ストラテジー、経営理論よりも、本当に大切なのは、経営者の考え方、心の問題です。
繰り返しになりますが、Kさんが、離婚するときに、自分の心と向き合っていたら、違う結果になっていたかもしれません。Kさんが経営者から離れて、自分と向き合っていたとしたら、この先の人生は好転していくものと思います。
稲盛氏もおっしゃるように、運が良くて、「考え方にマイナスの要素をもっていても」Kさんは立派な会社の社長になり、立て直しのお手伝いができたのです。その運の良さをスルーするか、自分を素直に見つめるかはこの方の意思次第だったのだなと思います。
自分自身にも心して、戒めとしたいと思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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