こんにちは、
子供の英語の学習について、私のお友達からご質問いただきました。
小学校5年生の息子さん(わたるくん(仮名))のお話です。
学校の方針で、小学生の間に英検2級まで取った方が、今後の進学に何かと有利だと言われた。
けれども準2級までは取れたけれども2級がなかなか受からない。
これまで2回受験したけれども、落ちてしまった。
成績を見てみると、リスニングはよくできるけれども、リーディングができていないようだ。
両親は共働きで、この子の下にまだ小さい弟がいる。
両親は、なかなかわたるの勉強を見てやる時間がない。
自分の父(おじいちゃん)が孫の勉強を見ている。
わたるは1週間のうち平日の夜は、ほぼ毎日塾に通っている。
わたるはあまり勉強が好きでないようだ。
どうしたらわたるが英検2級に合格できるようになるか?
お話を聞いて、このような状況をお話いただきいただきました。
このお話を聞いた時から、どういうわけか、私の心が、ざわざわしていました。
この長男くんが、肩を落として、うなだれて、「おかあさん、英検駄目だった…」と打ち明けます。お母さんが「困ったわ・・・どうしようかしら、もう一つ英検専門の英語の塾に通わせるしかないのかしらって。。。」とため息をつく、そんな光景を思い描いてしまいました。
私自身が、英検を受験したのは30年も前です。
今と30年前とでは、問題の傾向も仕組みも違っているでしょう。
そこで英検2級の過去問を見てみました。
特にリーディングのところを拝見いたしました。
ざっと問題の傾向を把握した上で、本質的な解決と、表面的な解決についてお伝えしたいと思います。
表面的な解決とは、「英検で合格するためにやること」、という意味です。
本質的な解決とは、「何のために英語を勉強するのか?」これを理解することです。
その上で、何が子供の成長にとって一番良いのか?
これを考えます。その上での解決法が本質的な解決法です。
あくまでも、こちらの相談者様からの情報をもとに、私の方で想像している内容です。
見当はずれのことも、全く違うこともあるかもわかりません。
このあたりをお含みおきください。
まず、本質的な解決として挙げられるのはこのような点です。
本質的な問題解決法
1 英検合格は、大人を満たすためだと、子供にしっかり伝える
2 子供の痛みを理解する
3 子供が自分の成長の機会をくれたと認識する
4 夫婦仲を良くしようと努力する(子供が話しやすい環境)
5 コミュニケーションの本質を考える
6 子供の本当に好きなコンテンツを一部英語にする
1つずつ説明いたしますね。
1 英検合格は、大人を満たすためだと、子供にしっかり伝える
まず1番最初はこれですね。
試験のための勉強は、エネルギーと時間を必要とします。
子供には動機付けが必要です。
何のためにそれをやるのか?という事ですね。
あなたの将来のため
これができればいい中学に入れる
いい高校に入れる
いい会社に勤められる
お給料がたくさんもらえる
そして幸せな人生を歩める
昭和から平成の日本の社会を生きてきた方の価値観はこのようなものではないでしょうか?
お分かりかと思いますが、これは大人の価値観ですよね。
大人が正しいと思う方向に子供が進む、そうすると大人が安心できるわけです。
子供が勉強するとは、究極は大人を安心させるために勉強するのだ、という事ですね。
何を言っている?子供が勉強するのは、子供自身のためだ。
勉強は必ず子供のためになる。
そのために、こちらは心を鬼にして、子供を勉強させているのだ。
このように思われるかもしれません。
ごもっともだと思います。
ここで注意していただきたいのは、英検のための勉強ということです。
英検のための勉強が、その先、この子供の将来にとって、どれほどの意味があるのか?
という事ですね。
ちょっと話がそれますが、ここ3~4年、不登校のお子さんの話をずいぶん聞いています。話しているのは大人ですから、大人同士の感覚で、
「不登校は困ったことだね…どうすれば学校に行くのかな…」という話し合いになります。
けれども、子供の立場になって考えてみましょう。
そして、もう一度、日本の小学校や中学校で、いわゆる義務教育の中で教わる内容をじっくり考えてみていただきたいのです。
この義務教育の中で教わることが、全て完璧にできないと、子供は、この先の世の中で生きていけないのでしょうか?
私は教育の専門家でも何でもないので、このような意見を申し上げるのは不適切かもしれません。けれども、自分の受けた教育や、今の親御さんや先生のお話を聞いてみると、必ずしも子供のためになる教育ばかりとは限らないと思います。
子供はこれを肌で感じているのかなと思います。
何でもソツなくできるジェネラリストが求められるのは、昭和で終わりでしょう。
これからのネット社会、世界の様々な人とつながっていく、このような社会を考えます。
その中では、「自分が何ができるのか?」、「どんなことをして社会に貢献していくのか?」が注目されます。
自分の役割を探す時代のような気がします。
そうすると、画一的な教育に、子供たちの本能が拒否反応を示しているようにも見えます。
好きなものと嫌いなものはある。
自分の時間の一分一秒でも、好きなことに使いたい。
このような思いは、子供なら誰でも持つのではないでしょうか?
それでもなお、子供にとってはピンとこない、理由のわからない勉強する。
そこに時間とエネルギーを使わなければならない。
これは大きなストレスです。
なぜそのストレスを受けないといけないのか、これをしっかりとフェアにお話をする必要があると思います。
「わたる、お前が大きくなっていくときに、英語で人とお話ができる、これはとても大切なことなんだよ。だから英語の勉強が必要なんだ。英語の勉強にはたくさんある。その中で、英検を受けないと、いい中学にも高校にも行けないかもしれない。もし、わたるが、英検の2級を取っていなかったから、自分が希望する高校に入れなかった、こんなことがあったらお父さんはとっても悲しくなる。どうしてあの時、もっとわたるに勉強しろって言わなかったのか、勉強するための手伝いをしてあげなかったのか、お父さんは、本当に悲しくて涙が出そうだ。だから今、渉が勉強してくれれば、お父さんはとても嬉しい。お父さんは安心できる。だから、わたるに勉強してほしい。英検の勉強が実際、どれほどわたるの人生に役にたつかわからない。でも、お父さんはわたるに勉強してほしい。」
このように、何のために勉強するのか? これを、はっきりお子さんにお伝えしたほうがいいと思います。
将来、必要になるかどうかわからない、そのための勉強をするのは、子供のためではなく、本当は大人を満たすためなのです。
これを伝えた上で、子供の協力を仰ぐ、物事の本質はこれではないのかと思います。
2 子供の痛みを理解する
英検2級を受験しろ、というのですから、少なくとも親は、何を勉強しているのかを理解しましょう。子供がどんな試験を受けているのか?これを理解するように努めましょう。
私は英検2級の問題を見ていました。
リーディングの問題3問に目を通しました。アメリカのホームレスの問題が描かれています。オペラについての記事が書かれています。イベント企画についてのEメール文が書かれています。
これを小学校5年生の子供が読んで解くのか…こう思ったらとっても切なくなりました。ホームレスがうじゃうじゃいる地域、頭に思い浮かべることができるだろうか? オペラ以前に、ミュージカルや、お芝居、何かのライブのパフォーマンスを見に行ったことがあるのだろうか? 学校の中の行事で、仲間と何かを分担してやるという経験があるのだろうか? このような経験がなくて、果たしてこの問題の内容が分かるのだろうか?
経験がないのに、字面を追って、よくわからない回答にたどり着け?
こんなことを強要されるんだろうか??
そう考えると苦しい…かなり被害妄想的になって、わたる君に同情してしまいました。
子供が、どんな問題に直面して、何を解決しないといけないのか?
これを理解することが大切かなと思います。
その上で、これ(英検2級)を頑張って欲しい。
だから一緒に達成できるように頑張っていこう、というのが子供の動機付けに役立つかなと思います。
3 子供が自分の成長の機会をくれたと認識する
子供が努力する対象がわかったら、どうすれば周りの大人がその達成を助けることができるのか、これを考えましょう。
英検2級には、このような一般の新聞で出てくるような記事、あるいはビジネスで使う簡単な文書が出てくるのです。
10歳の子供に、そのリアリティーを持てという方が無理かな、と思いますがいかがでしょうか?。
それならば、社会問題や文化、時事関連など、どうすれば子供にわかりやすく伝わるのか?
大人が自分で考えて、説明することが必要です。
もちろん、親御さんやおじいちゃんなど、周りの大人には、いきなりこうした難しい内容を噛み砕いて説明することはできないかもしれません。
けれども、子供から、今、こうして勉強の機会をもらっている、と思って真摯に取り組んでください。そうすれば真心は、子供に伝わるはずです。お父さん、お母さん、おじいちゃんが自分のために何やら一生懸命頑張ってくれている。自分も頑張ろうと素直な心を持っている子供であればそう思うのでないでしょうか?子供の心はとても素直だと思います。大人がねじ曲げて捉えているのかもしれませんね。
4 夫婦仲を良くしようと努力する
(子供が話しやすい環境を作る)
子供の英検の話をしているのに、うちの家庭環境に立ち入らないでほしい。
余計なおせっかいをしないでほしい、
聞かれたことだけ答えて欲しい
このようにおっしゃられるかもしれません。
全くその通りだと思います。
このわたるくんのスコアから「わたる君は、とてもよく大人の話を聞いているのではないか」と思いました。
遊んでいるようでも、大人の話に神経を集中しているのではないかと思ったのです。
なぜならば、自分のことで両親が言い合ったり、喧嘩したりしていることがあるからではないでしょうか?
英語は、勉強ではなくてスポーツです。
これは私の本、英語貴族と英語難民でもお伝えしています。
英検のリスニング試験では、受験生は、自分の言語ではない言語を聴くわけです。
自分が普段使っていない言語を聞くわけですから、ここもかなりストレスがかかります。
そこは持ち前の耳の良さと能力で乗り切っているように思います。耳の良さがさらに発揮されているのは、周りの言うことに神経を集中しているからだと思います。けれども、自分が思う事を、自由にお話しできていないのではないか? と思いました。
自分が話すことで、両親が喧嘩をする、こんな環境が続くと子供は話すことをやめてしまいますね。
自分が発言しても、
両親が喧嘩をしない、
仲良くしてくれる、
そして自分の話しを興味を持って聞いてくれる
このような環境なら、日本語でも英語でもお話をしてみようと思うのではないでしょうか?
共働きで忙しく、小さい子供もいるので、わたるくんの試験勉強は時々おじいちゃんが見ている、ということでした。私達の世界では、私達が心に思ったことが現実となって現れます。
ご夫婦が、相手と一緒の時間や空間を共有したい、この思いがないと、自然と一緒にいる時間が少なくなってきます。子供の英検受験のためですが、これを機会に、夫婦の在り方を考えてみてもいいのではないでしょうか?
とても大切なところだと思うので、付け加えさせていただきました。
5 コミニケーションの本質を考える
大学の先生をしている、私の友人が言っていました。
「大学生を見ていると、課題図書を読んでは来るけれども、その内容を考えていないようだ。字面を追って、その中身が何を言っているのか?ここを考えないようだ。」
このような内容です。
これはコミニケーションの本質から外れていると思います。
コミュニケーションの本質は、相手の言わんとしていることを理解し、
自分の言いたい内容を伝える、これです。
先程の2級の過去問の例では、「ただアルファベットを追う」では無いのです。
ホームレスの人たちの、何が問題だったのか?
誰がどうやって解決したのか?
ここを読み取らないといけません。
この英検の問題では、慈善家がホームレスに移動式のシャワーを提供したとなっています。
それを読み取った後、子供は素直な目で素直な質問をしてくるでしょう。
「シャワーじゃなくてお風呂が良いのに、どうしてお風呂じゃないの?」
「シャワーよりも先に、ご飯が食べたいのに、どうしてご飯をあげないの?」
こんな質問が出てくるかもしれません。
これこそが、実は、コミニケーションの本質なのです。
この、当たり前の感覚を養うことが、情報社会を生きる上で大切だと思います。
これは、周りの大人がこの感覚を持っていないと教えることができません。
「そんな事はこの問題で聞かれてないでしょ」
「そんなこと考えているから、この問題で間違えるんでしょ」
こんな言葉を投げかけていませんか?
英語を子供にやらせたい、そう思ったら、大人がまず何のために英語をやるのか?
コミュニケーションとはどういうことか?
この軸を持つことが大切だと思います。
6 子供の本当に好きなコンテンツを一部英語にする
私の夫の話をして恐縮ですが、とても関連していると思うのでお話しさせてください。
ブラジル人の夫は子供の時から、ゲームがしたかったと言っていました。
けれども親がダメだと言って、絶対にゲームを買ってくれなかったそうです。
日本に来て働いたとき、とても嬉しくてゲームを買いました。
朝昼晩と時間があれば、ゲームをやっていました。
中でも好きなのは、日本の忍者がお姫様を助けるシリーズです。
私も度々呼び出されて、
この日本語はどんな意味?
今、このサムライはなんて言ったの?
と聞かれました。
夫はこうした表現から、たくさんの日本語を学んできました。
「きさま、なにものだ?!」という表現と
「どちら様ですか?」が意味的に同じ、これを理解したのです。
このようなインプットは、夫の日本語上達にとても役に立ったと思います。
大人を満たすために、一生懸命英語を勉強しているわたるくんですから、せめて何か好きな事と英語を結びつけてあげたいと思います。
電車が好きだったら、二か国語でみれる機関車トーマスのDVDを買ってあげるとか、
大好きなゲームの英語版を一緒にやってみるとか、
試験に関係なく、子供の好きな事と英語をつなげることができればいいなと思います。
表面的な解決は、以下の項目ですが、これは次回お話しいたします。
表面的な問題解決
1 語彙をふやす
2 読み聞かせ
3 日本語プレゼン
4 英語交換日記
5 文法力をつける
6 過去問を丁寧に解く
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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